ミラクル・スピン初体験!」
 
 橙色の朝焼けの光に鮮やかにその勇姿を堪能させてくれる雄大なロッキー山脈。どんな大芸術家が、どんな最良の絵の具を使って描こうとしてもとてもかなわない、まさに、どんな詩人もすべてを表現できないような思わず息を呑む光景。

 カナダ滞在、1年3ヶ月。早朝のカルガリーからバンフへの夢のような景色を余裕を持って楽しめるようになった。今まで、マイナス数十度という高性能冷凍庫の世界は未体験ゾーンで、しかも、雪と氷の“じゅうたん”の上を時速110kmで疾走するという芸当なんて夢の世界だった九州育ちの中年牧師にとって“キンチョーの夏”ならぬ“緊張の冬”だった。

 ある時は、濃い霧の中を、只ひたすらセンターラインを目印に、追突の恐怖にあおられながらノロノロ走行したことや、ヤクザなエルクにとおせんぼされ、彼らの“ガンツケ”に肝をつぶしてしまったこと、雪の降りしきる中、大型トラックの追い越しに、真っ白な雪煙のおまけをいただき、顔面蒼白でハンドルを握りしめたことなどなど、思えば、よくぞご無事で、と言いたくなるような出来事、数知れず。ですから、走行前には、まだ命のほしい私は道中の安全を懸命に祈るのが習慣であった・・・

 が、忘れもしない、その朝、3月5日の日曜日の朝、バンフの礼拝のため車に乗る。時刻は6時半、気温マイナス7℃、小雪。「こんなもんか、今日も大丈夫!」、昨日までの謙遜に祈っていた姿は既に、そこにはなかった。

 カルガリーの難所も無事クリアー。バンフ国立公園のゲートも通過、前方のノロノロ集団を、100kmでクーンと気分良く追い越す。未体験ゾーンはそこに待っていた。

 比較的急な右カーブのはるか前方の横向きに停車している車を発見。冷静な頭脳が命令を出す。「ブレーキは危険、ゆえに、シフトダウンを選択せよ」。理性的な判断に自画自賛しつつ、実行。

 ガクンと急減速、いつもと違う!グラグラとハンドルが生き物化する。途端に車が遊園地のコーヒーカップ現象、スピンもここまで回ると回転数を勘定する余裕も無くなってくる。感覚的に「このままだと、あのコンクリートの分離帯壁に激突だな。」一瞬のうちに色々な事が脳裏をかすめる。「この車が壊れたら、もしかしたら新車に?」というような不謹慎な思いや、「無謀運転の牧師、北国に果てる!」というバンフタイムズの見出しがテロップとして流れる。

 しかし、まだ地上での仕事が待っているらしく、奇跡が起こった。絵に描いたような停車、壁から数センチ。もっとも方向は正反対向きではあったが。

 追い越して行く車の「OKか?」のサインに日本人スマイルを見せつつ、最高の悔い改めと、このミラクルに感謝の時を持ったのであった。

 皆さん、カナダの雪道のドライブには、くれぐれもご用心あれ。

・・・聖書の中の気になる一言・・・

 「悪者の恐れていることはその身にふりかかり、正しい者の望みはかなえられる。」
(旧約聖書 箴言10:24)

 

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