願い叶ったり!ホームシアター」
 「Hello.」・・・電話の向こうは、紛れも無くカナディアン。当たり前だが英語をしゃべってくださる。全神経を集中させて聞き取る。カナダに来て間もない頃の、今は懐かしき緊張の瞬間。電話の内容は、ミーティングがあるから、バンフの喫茶店に集まれとのこと。不安をスーツケースに詰め込んで、約束の地へ。当たり前だが、ガイジンさんばかり。いや、ここでは私が外人さんなのだ。「レッツゴー」と言われるので、私も付いて行った。

 到着地点は、何と映画館。ここで初めて映画の試写会に招待されたことに気付く。緊張の糸がぷっつーん、切れたかと思ったら、今度は反対に、この映画好き人間(私)に興奮の火が点いた。映画は「プリンス・オブ・エジプト」。「まず、映画を観れるなんて、こりゃ、幸先がいいわい!」が第一声。その日大いに楽しませていただいた。

 その後、カルガリーに引っ越して、その家の地下を一目見ただけで、目の前にバーンと幻が見えた。それは、学生時代からの夢、「ホームシアター」。3度の飯より大好きな映画を、映画館の雰囲気で味わいたい。その贅沢がここでは実現できそうだ。

 青写真が出来上がると後は早い。方向音痴の申し子みたいな私だったが、精力的に複数の電化ショップを回ったがため、市内の道の殆どが頭に入ったくらいだった。購入のためには、設備についての英語が必要だが、不思議に興味のある物の購入となると驚くばかりに英語がポンポンと出てくるから自分でも恐ろしいくらいだった。

 さぁ、配線も無事完了。試写、緊張の一瞬。画面がスクリーンいっぱいに広がる。

 感動。心臓のときめきが聞こえる。いつまでも心臓のときめき音だけ・・・。トーキー映画状態、音の無い世界・・・。初めからやり直し。何回やっても、むなしく画面だけが活発に動く。時計の針は既に午前3時半を指している。「ここでくじけてなるものか!」。日常の仕事では見たことも無い闘志がみなぎっている。もう20年早くこの集中力を勉学に生かせたら、と無駄なことを思いつつ、装置のセットアップに懸命に取り組む。
 格闘何と、およそ10時間。時は午前5時、ついにその瞬間が来た。耳をつんざく轟音。
 「こ、こ、この感触!!」。
 感動に打ち震えている自分の耳にかすかな電話の音。ボリュームを下げ、興奮のまま受話器をとった。知人からだ。
 「妻が氷ですべってしまって腰を痛めちゃってね・・・。」
 私、何を思ったか、言ってしまった。
 「最高ーっ!」
 ともかく、私の映画熱に拍車が一層かかり始めてしまった記念すべき瞬間であった。

・・・つい参考になってしまう聖書の一言・・・
 「軽率に話して人を剣で刺すような者がいる。しかし知恵のある人の舌は人をいやす。」
     (旧約聖書 箴言12章18節)

 

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