「知らぬは大損、大恥!」
 
 「何だって!?ガス代350ドル?」
 請求書を見て、平常より2オクターブもの高いお叫びが、共感した家内の声と共に部屋中にこだまする。「先月の2倍。もしかして来月は4倍…?。高くなるとは聞いていたけれど、これほどとは!?」と、しばし絶句の2人。
その日は、Canmoreの新居に引越ししたばかり。以前の小さな家でこの経費。今度からは…と思うと、居ても立ってもいられず早速、部屋の設定温度をグググッと下げる。何枚もセーターを着込んで、震えながらも寒さを凌ぐけなげな夫婦。

 そこへ、カナダ生活経験豊富な知人の訪問。私達の手にする請求書を見て、「何ですかこれは…?350の後にCRがついていますから、これはクレジットで、あなた達の支払うべき金額ではなくガス会社に対するマイナス支払いですよ。つまりこれから先、この金額に達するまで支払う必要が無いということ!」
今まで請求金額と思い込んで、せっせとCR付きの金額を支払い、その上、政府からの援助金まで加算されてきた挙句の数字。それを知って、またしばし絶句の夫婦。電光石火、設定温度の変更、さらに暑苦しいセーターを脱ぎ捨てて領収書片手に勝ち名乗り、地獄から天国への大転換。しかし、お互いの無知を深く反省した次第である。本当に、無知によって失敗したり、大恥をかいたりの人生である。

 そのひとつ。今も鮮明によみがえる卒業旅行での思い出。私と友人3人の仲良し珍道中。卒業と就職の喜びを胸に、名古屋から長崎へ、初めての遠出3泊旅行。幹事は私。ホテルの予約から寝台車の予約まで「まかせて!」と引き受け、最初の宿泊地へ意気揚揚と向かう。その名も“長崎グランドホテル”。高級ホテルである。痛い出費を覚悟しての決定だった。4人とも宿泊経験は民宿止まり。先頭の私が自信たっぷりに全員へ激を飛ばす。

 「みんなっ。ここは胸を張って。決しておのぼりさんと悟られないように!」

 さっそうとホテルの玄関に向かう。回転式ドアに4人一緒に入ったものだから、挟まれそうになりながらロビーへなだれ込む。そこで目に飛び込んできた光景は、当たり一面に敷きつめられた美しいじゅうたんの大海原。一段上がったところからフロントに向かって漂っている高級感は、何かしら田舎者を拒絶している感がしないでもなかった。
 私は「さぁ、ここで靴を脱ぐぞォ。」と言いながら、一段高くなっているところに腰をおろし、靴を脱ぎつつ手下どもに指示を流す。
「くれぐれもフロントまでは、あたりをキョロキョロしないように。一発で田舎者とばれてしまうからな。」靴を脱ぐみんなから、「OK!OK!」と、リーダーを信頼しきったよい返事が帰ってくる。そこへいきなり、キンキラの襟章などを付けた近衛兵みたいなドアボーイが駆けつけてきた。

 「お客様!お客様!ここではどうぞ、靴はそのままでお部屋までいらっしゃってください。」

友人の視線を一斉に浴びる。決して尊敬のまなざしではないことだけは確か。そしてその時、ロビーにいた団体さんの数人が口に手をあてがって笑いを必死に堪えている姿を決して忘れてはいない。その晩の夕食代はすべて私が支払うことに相成ってしまったのは、言うまでも無い。

 その時の友人と会うたび20数年も経っているのに、いまだにどこに行っても、「おい、ここでは靴は脱がなくてもいいのかァ?!」と冷やかされてしまう。

   <聖書の中の参考になる一言>      
「 熱心だけで知識のないのはよくない。急ぎ足の者はつまずく。」(箴言19章2節)

“Enthusiasm without knowledge is not good; impatience will get you into trouble.”      Proverbs 19: 2

 
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